放送大学の学生(選科履修生や全科履修生)として、オンラインジャーナルや図書館の豊富な電子リソースを効果的に活用することは、おとなの学習者が、探索・研究を深める上で不可欠です。本ガイドでは、放送大学附属図書館が提供する電子ブック・電子ジャーナルの内容、具体的な利用方法、検索手順、そして図書の貸し出し制度について、実践的かつ体系的に解説します。
放送大学附属図書館の電子リソース概要
放送大学附属図書館は、国内外の学術情報をはじめ、辞書・統計・法令などの情報、日本経済新聞社刊行の雑誌や朝日新聞のバックナンバーなど、多様な電子形態の契約を結んでおり、学生は自宅からでもこれらのリソースにアクセスできます。2011年9月から電子ジャーナル等のリモートアクセスサービスが導入されており、放送大学に所属する学生・教職員であれば、自宅や外出先から契約している電子ジャーナルやデータベースを利用することが可能です。
電子ブック・電子図書サービス
放送大学が提供する電子ブックサービスは、和書と洋書を合わせて数万点規模のコレクションを擁しています。主要な電子ブックプラットフォームには以下のものがあります。

EBSCO eBooksは、和書約6,500点、洋書約9,400点が利用可能で(2024年3月現在)、各タイトルに設定されているダウンロード可能ページ数までをPDFファイルで保存でき、印刷も可能です。ただし、同時に利用できるのは1名までで、本文閲覧終了時には必ず「閲覧終了」ボタンをクリックする必要があります。
Maruzen eBook Libraryは、和書約12,000点、洋書約700点を利用でき(2024年3月現在)、1タイトルにつき各タイトルに設定されているダウンロード可能ページ数までをPDFファイルで保存できます。2022年6月29日からは、ダウンロード時に放送大学のメールアドレスの入力が必要になりました。こちらも同時利用は1名までで、閲覧終了時には「閲覧終了」ボタンのクリックが必須です。
KinoDenは、和書約630点が利用できる電子図書館サービスで(2023年3月現在)、タイトルごとに設定されたダウンロード可能ページ数までPDF保存と印刷が可能です。本文閲覧終了時は、本文を表示しているタブ(別ウィンドウの場合はそのウィンドウ)を閉じる必要があります。
ジャパンナレッジLibは、「日本大百科全書(小学館)」「Encyclopedia of Japan(講談社)」「日本人名大辞典(講談社)」「会社四季報」「週刊エコノミスト」「東洋文庫」「人物叢書」など100種類を超えるコンテンツを集積したデータベースで、4名まで同時利用が可能です。利用終了時は必ず画面右上のログアウトをクリックする必要があります。
これらの電子ブックは、各タイトルの同時接続可能人数が1~数名と限られていることが多く、制限を超える大量のダウンロードは禁止されています。
放送大学の利用者区分別の図書貸出条件の比較表
電子ジャーナル・学術雑誌データベース
放送大学は、世界的に著名な出版社の電子ジャーナルパッケージと契約しており、最新の学術研究にアクセスすることができます。
ScienceDirectは、Elsevier社が提供する世界最大級のフルテキストデータベースで、約2,200タイトル(無料提供分含む)の雑誌を閲覧できます。主要分野は科学、技術、医学、社会科学で、材料科学、環境科学、工学などの幅広い分野の最新研究にアクセス可能です。ScienceDirectに掲載された論文は、研究者に大きな影響を与え、科学技術の発展を促進しており、文部科学大臣表彰の科学技術賞を受賞した研究者も輩出しています。

SpringerLinkは、Springerグループが提供する約2,200タイトルの洋雑誌論文(1997年以降)と約1,000タイトルの1999年以前に刊行されたジャーナルを初号から閲覧できます。収録分野は自然科学・人文科学・社会科学全般にわたり、特に医学研究の最前線において重要な役割を果たしています。臨床医学や生物医学・生命科学の分野において、約1,600誌の学術雑誌を利用でき、医学分野の電子ブックも2020年12月時点で260,000点以上のタイトルが収録されています。
JSTOR (The Arts and Sciences I Collection)**は、人文科学・社会科学領域の約110タイトルの電子ジャーナルを初号から最新号の3~5年前までを提供しています。JSTORは人文科学と社会科学の分野において学術研究の発展に大きく貢献しており、これらの分野の主要な学術雑誌のバックナンバーを電子化し、世界中の研究者や学生がアクセスできるようにしています。美術や音楽などの芸術分野も含んでおり、幅広い人文・社会科学の学際的な研究を支援しています。
Cambridge Coreは、Cambridge University Pressが提供する電子ジャーナルと電子ブックの統合データベースで、本学ではHSS(人文・社会科学分野)パッケージの約280タイトルについて全文を閲覧できます(2025年12月まで)。言語学、文学、歴史学、経済学、法学、数学、物理学、医学など多岐にわたる分野の最新研究を知ることができます。
Natureは、SpringerNatureグループが提供する国際的に著名な科学分野の総合学術雑誌で、Nature本誌のみ、2017年(Vol.541, No.7635)以降を閲覧できます。
Wiley Online Libraryでは、本学では4タイトル(Cognitive science、Topics in cognitive science、Philosophy and Phenomenological Research、Ethos)が利用できます。
これらの電子ジャーナルは、1997年以降に出版されたジャーナルに加え、1996年以前のバックナンバーも利用可能なものがあり、過去の重要な研究成果も参照できます。

電子ジャーナルは、勤務先とかで利用できないと、個人利用はほぼ不可能
大きな声では言えないが、放送大学の学生になると、入学金や授業料を上回る価値をもつ学術情報が個人利用できるという大きな利点があります
データベース・新聞アーカイブ
放送大学は、学術研究だけでなく、時事情報や統計データへのアクセスも提供しています。
朝日新聞クロスサーチ(聞蔵IIビジュアルのリニューアル版)は、1879年(明治12年)以降から当日までの朝日新聞記事、AERAの記事、週刊朝日2000年4月からの記事等が見られます。1984年以前の新聞記事検索はログイン後「朝日新聞縮刷版」のタブから利用でき、知恵蔵、人物データベース、歴史写真アーカイブも利用できます。2名まで同時利用が可能で、利用終了時は必ず画面右上のログアウトをクリックする必要があります。
日経BP記事検索サービスは、「日経ビジネス」「日経PC」「日経アーキテクチュア」「日経メディカル」を始めとする日経BP社発行26誌と、「日経クロステック」「日経クロストレンド」などWEBメディア7つが利用できます。主要分野はビジネス、コンピュータ、ネットワーク、建設、サービス関連、医療関連で、インターネットを通して検索・閲覧・印刷(個人的な利用に限る)が自由に行えます。ただし、利用可能記事本数には限りがあり、短時間での大量閲覧およびダウンロードファイルの保存が禁止されています。
ジャパンタイムズアーカイブは、ジャパンタイムズ(the Japan Times)の1897年(明治30年)から2020年(令和2年)のアーカイブで、創刊当時から日本の情報を英語で発信し、邦字紙とは異なる視点で海外の人にもわかりやすく日本について記述しています。国内外の政治・経済・文化から生活に密着したテレビ欄・広告・読者投稿欄まで、当時の情勢が読み取れる資料価値の高いコンテンツが掲載されています。
CiNii Researchは、国立情報学研究所(NII)提供の無料データベースで、文献だけでなく、外部連携機関、機関リポジトリ等の研究データ、KAKENの研究プロジェクト情報などを含めて、シンプルなインターフェースから気軽に横断検索することができます。
放送大学の電子リソース(オンラインジャーナル・電子ブック)利用手順のフローチャート


リモートアクセスの具体的な利用方法
放送大学の学生・教職員は、リモートアクセスを経由することにより、放送大学で契約・提供している電子ジャーナルやデータベースを、自宅や外出先から利用することができます。リモートアクセスの利用は、提供元との利用許諾契約に基づいて、放送大学に所属する学生・教職員と許可された電子ジャーナル等に限定されています。
ログイン手順
電子ブック・電子ジャーナルを自宅から閲覧するための具体的な手順は以下の通りです。
- 放送大学附属図書館のWebサイトから「電子ブック・電子ジャーナル」のページに遷移し、「ログイン」ボタンをクリックします。
- 所属確認のため、放送大学認証システムのログインIDおよびパスワード(システムWAKABAと同一です)を入力し、「Login」ボタンをクリックします。ログインIDは学生番号(半角英数ハイフン無し)で、パスワードは入学許可書に記載されているパスワード(半角英数)です。
- ログインに成功すると、「電子ブック・電子ジャーナル」のページに戻ります。一覧よりご希望のものを選択します。例えば、Maruzen eBook Libraryを利用希望の場合は、名前のリンク部分をクリックすると、Maruzen eBook Libraryの説明部分へジャンプしますので、「利用する」ボタンを押します。
- この後それぞれのデータベースの画面が開き、利用可能となります。
リモートアクセス時には、画面右上に「放送大学学園」と表示があれば学内と同じ環境であることを確認できます。
システムWAKABAとの連携
放送大学のオンライン学習システムであるシステムWAKABAは、教務情報システムとして機能しており、図書館のリモートアクセスにも同じログイン情報を使用します。システムWAKABAへのアクセス方法は、放送大学ホームページ(https://www.ouj.ac.jp/)を開き、「在学生(WAKABA)」をクリックし、「システムWAKABA(教務情報システム)」をクリック、「ログイン」をクリックして、ログインID(学生番号)とパスワード(入学許可書に記載)を入力します。
システムWAKABAでは、キャンパスメール、Web通信指導、オンライン授業、放送授業のインターネット配信、過去の単位認定試験問題・解答等、単位認定試験時間割など、様々な学習支援機能が統合されています。このシステムと図書館のリモートアクセスが同一のログイン情報で利用できることは、学生にとって非常に利便性が高い設計となっています。
蔵書検索システム(OPAC)の使い方
放送大学附属図書館では、蔵書検索システム(OPAC:Online Public Access Catalog)を通じて、図書館所蔵の資料を検索することができます。
OPACで検索できる内容
OPACでは以下の3つのタブから検索が可能です。


蔵書検索タブでは、放送大学で所蔵している図書・雑誌を検索できます。図書には、図書館で所蔵している冊子体と、本学が購入している電子ブックがあります。
他大学検索タブでは、全国の大学図書館などが所蔵している図書・雑誌などを検索できます。蔵書検索で資料が見つからない場合、有料で他大学の図書館から取り寄せることが可能です。
ディスカバリーサービスタブでは、放送大学で利用できる電子ジャーナル、電子ブック、所蔵図書、雑誌などを横断検索でき、論文名でも検索可能です。電子ジャーナル、電子ブック等で利用可能なものはオンラインでそのまま参照することができます。
検索方法の詳細
簡易検索画面では、検索ボックスに書名や著者名などを入力して検索します。より詳細な検索を行いたい場合は、「詳細検索」をクリックすると、項目ごとの検索、資料形態や所蔵館などで絞り込んだ検索ができます。


資料のタイトルが途中までわかっている場合は、部分一致検索が可能で、表示された候補からひとつを選択して「検索」ボタンを押すと検索を開始します。ISBNやISSNという番号で調べる場合は、「蔵書検索」タブの「詳細検索」ボタンをクリックして、詳細検索画面からISBN/ISSNの項目に入力することで検索できます。ISBN(国際標準図書番号)は図書を識別するための番号、ISSN(国際標準逐次刊行物番号)は雑誌を識別するための番号です。
検索結果から、目的の図書の請求記号・配置場所をチェックし、目的の棚から請求記号の図書を見つけ出し、受付カウンターで貸出の手続きを行います。
CiNii Researchを活用した論文検索
論文を探す場合は、CiNii Researchの利用が便利です。CiNii Researchは、論文データ、つまり論文名、著者名、抄録などのどこかに、入力したキーワードが記述されている論文を検索できます。
検索のコツとして、AND検索(スペースで区切りながらキーワードを2,3語入力する、例:「視覚障害 学習 支援」)、OR検索(どちらか一方を含む論文を探せる、例:「鍼灸 OR はり治療」)、NOT検索(NOTの後に入力する語を含まない論文を探せる、例:「障害児教育 NOT 幼稚園」)があります。ORとNOTは必ず大文字で入力します。
検索条件を細かく指定したい場合は、検索語入力欄下の詳細検索を使います。著者名、出版年、掲載誌がわかっている場合はこちらに条件を入力してから検索ボタンをクリックするか、キーボードのエンターキーを押します。
CiNiiで「本文あり」等の指定をして検索すると、その場で本文が読めるものだけを検索することができます。放送大学附属図書館経由で文献複写を取寄せたい場合は、「放送大学関連情報」画面から複写依頼画面にアクセスできます(複写は有料です)。
図書館の貸出制度
放送大学附属図書館では、学生や教職員に対して図書の貸出サービスを提供しており、貸出冊数と期間は利用者の身分によって異なります。
貸出冊数と期間
- 本学の大学院修士課程学生(休学者除く):20冊以内、1ヶ月以内
- 本学の学部学生(休学者除く):10冊以内、1ヶ月以内
- 本学の卒業生及び大学院修了者:3冊以内、2週間以内
- 館長の許可を得た者:3冊以内、2週間以内
貸出を受けている資料を引き続き利用したい場合は、当該資料に予約がなく貸出期間内であれば、1回に限り更新できます。延長後の貸出期間は、教員・役職員・名誉教授は1ヶ月以内、それ以外の方は2週間以内です。
自宅配送サービス
放送大学に在籍中の全学生は、本部図書館の図書を自宅などに配送するサービスを受けられます。対象資料は図書と放送大学テキスト(印刷教材)で、送料は往復とも利用する方に負担していただきます。
配送は佐川急便の着払い宅配便で行われ、図書受取時に料金をお支払いいただきます。送料の目安として、例えば4冊借りた場合、片道910円程度がかかり、往復すると1,820円程度になります。料金は図書の大きさや重さ、配送地域によって異なります。
返却のみ所属の学習センター・サテライトスペースで行うこともでき、その場合の返送料金はかかりません。
申込方法は、ユーザIDでログインすれば放送大学のOPACから申し込むことができます。また、所定の利用申込書に必要事項を記入の上、学生証のコピーを添えて郵送又はファックスで申し込むことも可能です。
その他の図書館サービス
直接来館して図書館を利用できない方は、学習センター・サテライトスペースの図書室を介して、所蔵図書の貸出等とともに、各種サービスを受けることができます。
他の大学図書館等を利用したい場合、相手図書館の必要に応じて、本学附属図書館長の「資料利用依頼状」(紹介状)を発行できます。利用希望日、資料などを特定した上でカウンターに申し込むか、申込書を記載したうえでメール添付によるお申込みも受付している。
文献複写・相互貸借サービス
資料を所蔵している図書館から複写物を取り寄せることができます。複写料金及び送料(郵便料金)は利用者の負担となります。
申し込みから資料の到着までは、おおむね1~2週間ほどかかります。複写料金は相手館の料金設定により白黒1枚35~60円、カラー1枚100円~150円ほどで送料が加算されます(その他に基本料等がかかる場合があります)。
他大学図書館等から図書を借用することもできます。借用した図書は、相手館が制限している場合は図書館(室)内での利用に限ります。利用期間は1~2週間程度になります。
レファレンスサービス
学習や研究を進める上で、利用者が必要とする文献や情報に関して、調査の方法を助言したり、参考図書やデータベースの紹介などにより支援するサービスがあります。
レファレンスサービスでは、特定の主題(テーマ)に関する文献にはどのようなものがあるか、どの資料に収録されているかを調べること、文献の正確な題名や著者名等を調べること、資料やデータベースの使い方について助言すること、特定の文献がどの機関に所蔵されているか調べること、特定の人物・団体や地名などについて調べること、特定の事項や用語などについて調べることなどの支援しています。



これで、おとなの知のインフラ構築の基礎ができあがりました。あとは、AIなどで横断的に情報探索を行いつつ、入手した論文をZoteroなどのレファレンスマネージャーで蓄積・管理し、自分の知的資産を増やしそれを活用していくことです。
オープンアクセス(無料利用できる)の論文のみで、情報探索や知的活用を提案する体験講座もあります。



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