「思考のOS」を鍛える、人類学・民族誌の名著
1. 「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」運動の中心人物
デヴィッド・グレーバーの著書『官僚制のユートピア:テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』(原題:The Utopia of Rules)を取り上げる。グレーバーの提示する「リベラリズムの鉄則」「構造的愚かさ」「解釈労働」といった概念は、現代のビジネスパーソンが直面する理不尽さを解読するための強力な武器となる。

2. アナキスト人類学者:デヴィッド・グレーバー
2.1 書誌データの特定と位置づけ
- 原著タイトル: The Utopia of Rules: On Technology, Stupidity, and the Secret Joys of Bureaucracy
- 著者: David Graeber(デヴィッド・グレーバー 1961年 – 2020年)
- 出版年: 2015年(Melville House)
- 日本語訳: 『官僚制のユートピア:テクノロジー、構造的愚かさ、リベラリズムの鉄則』(酒井隆史 訳、以文社、2017年)

本書は、グレーバーの代表作である『負債論:貨幣と暴力の5000年』(2011年)と、死後もなお議論を呼び続ける『ブルシット・ジョブ:クソどうでもいい仕事の理論』(2018年)の間に位置する作品である。リーマンショック後の「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」運動の中心人物として活動した経験が色濃く反映されており、現代社会を覆う閉塞感の正体を「官僚制の全面的支配」に見出そうとする試みである。本書は、序論、3つの主要なエッセイ、および付録(バットマン論)から構成されており、それぞれが独立した鋭い洞察を含んでいる。
2.2 著者デヴィッド・グレーバー:アナキスト人類学者の視点
デヴィッド・グレーバーは、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の教授を務め、現代社会の経済や労働に関する鋭い批判的著作で世界的な反響を呼んだ。グレーバーは単なる象牙の塔の住人ではなく、実践的なアクティビストであり、その理論は「現場」から生まれている。
2.2.1 労働者階級のルーツと政治的背景
グレーバーは1961年、ニューヨークの労働者階級の家庭に生まれた。父ケネスはスペイン内戦に国際旅団として参加した経験を持つ印刷工であり、母ルースは労働組合の活動家であった。この出自は、彼が「権力」や「制度」に対して抱く根源的な懐疑心のルーツとなっている。彼は幼少期から、規則や官僚制が決して中立的なものではなく、権力関係を固定化するための装置であることを肌身で感じていた。
2.2.2 マダガスカルでのフィールドワークと「国家なき秩序」
シカゴ大学大学院でのマーシャル・サーリンズ(Marshall Sahlins)の指導の下、グレーバーはマダガスカルでフィールドワークを行った。そこで彼が目撃したのは、国家による行政機構が崩壊し、警察も機能していないにもかかわらず、人々が平和的に共存し、秩序を維持している社会であった。この経験は、「国家や官僚制がなければ社会はカオス(万人の万人に対する闘争)になる」というホッブズ的な西洋の常識を根本から覆すものであった。
この人類学的視点こそが、本書の基底にある「官僚制は不可避ではない」「我々は別のあり方を想像できるはずだ」というメッセージの根拠となっている。
2.2.3 「ウォール街を占拠せよ」と現代への問い
グレーバーは2011年の「ウォール街を占拠せよ」運動において、「私たちは99%だ(We are the 99%)」というスローガンの形成に関わったとされる。この運動の中で彼が直面したのは、自由を叫ぶデモ隊が、警察という「暴力装置」によって物理的に排除され、管理されるという現実であった。本書『官僚制のユートピア』は、この運動の経験から得られた「なぜ自由主義的な社会において、これほどまでに警察や規制による管理が強化されるのか?」という問いへの理論的回答でもある。

※ 「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street、OWS)」は、2011年にニューヨークで始まった「私たちは99%だ」という社会運動のスローガン。これは、米国の富と収入の大部分が最も裕福な1%の層に集中しており、残りの99%が経済的困難に直面しているという現状を訴えるもの。この運動は主に経済格差、企業の貪欲さ、政治における資金の影響力に抗議することを目的としていた。
3. 核心的な3つの概念:現代社会を読み解く思考ツール
本セクションでは、本書の核となる3つの重要概念を抽出・解説する。これらは、受講者が日々の業務で感じる違和感を論理的に説明するための強力な語彙となる。
3.1 思考ツール①:「リベラリズムの鉄則」と全面的官僚化
多くのビジネスパーソンは、「規制緩和」や「市場原理の導入」が業務を効率化し、煩雑な手続きを減らすと信じている(あるいは信じ込まされている)。しかし、現実は逆である。IT化が進み、民営化が進むほど、書類仕事や報告義務は増え続けている。このパラドックスを解き明かすのが「リベラリズムの鉄則」である。
3.1.1 「リベラリズムの鉄則」の定義
グレーバーはこの法則を次のように定式化している。
リベラリズムの鉄則(The Iron Law of Liberalism):
「お役所仕事を減らし、市場原理を促進しようとする政府の改革や主導は、どのようなものであれ、最終的には規制の総数、書類業務の総量、そして政府が雇用する官僚の総数を増加させる結果をもたらす。」
3.1.2 なぜ「自由化」が「規制強化」を招くのか?
この直感に反する現象のメカニズムを、グレーバーは歴史的・構造的に説明している。
- 市場の人工性: 「自由市場」は自然発生的なものではなく、国家によって人工的に作られ、維持されるものである。契約の履行を強制し、私有財産を守り、貨幣制度を維持するためには、膨大な法整備と、それを監視・執行する警察、裁判所、監査機関が必要となる。19世紀のイギリスにおいて、自由放任主義(レッセフェール)の導入とともに、警官や検査官の数が爆発的に増加した歴史的事実がこれを証明している。
- 官民の融合(Total Bureaucratization): 現代においては、公的官僚制(政府)と私的官僚制(大企業)の境界が消滅している。銀行を例にとれば、銀行は政府の認可なしには存在できず、その利益構造は法規制と密接に結びついている。「規制緩和」とは、実際には「特定企業の利益になるようにルールを書き換えること」であり、その新しい複雑なルールを管理するために、新たな監査役、コンプライアンス担当者、弁護士が必要となる。結果として、顧客が口座を開設するための書類は増え続け、行員の手続きも煩雑化する。
- 利益抽出のメカニズム: 現代の資本主義(特に金融資本主義)における利益は、モノを作ることではなく、規制された枠組みの中で「手数料」や「レント(地代)」を徴収することから生まれる。これを確実に行うためには、厳格な契約と、それを強制する官僚的システムが不可欠である。企業のコンプライアンス部門が肥大化するのは、この徴収システムを維持・防衛するためである。
3.2 思考ツール②:「構造的愚かさ」と「解釈労働」
本書の第1章「想像力の死角(Dead Zones of the Imagination)」は、組織の中で人がなぜ「愚か」に振る舞わざるを得ないのか、あるいはなぜ「話の通じない上司・役人」が存在するのかを、心理的・社会的な力学から解明する。
3.2.1 暴力としての官僚制
グレーバーは、官僚制の根底には常に「暴力の脅威」があると指摘する。役所の窓口は平和に見えるが、もし書類の提出を拒否し続け、退去命令を無視し続ければ、最終的には警棒を持った男たち(警察)が現れ、物理的な強制力が発動される。官僚制とは、この物理的暴力を背景にした「命令と服従」のシステムである。
3.2.2 「解釈労働(Interpretive Labor)」の不均衡
暴力(圧倒的な権力差)が存在する関係において、特有のコミュニケーション不全が発生する。
- 定義: 「解釈労働」とは、他者の意図、感情、置かれた状況を推察し、理解しようとする精神的な労力のことである。
- 法則: 権力関係において、解釈労働の責任は常に「弱い側」に偏る。
- 歴史的例: 女性は男性の機嫌や考えを推察することに長けてきたが、男性は女性の内心を理解する必要性を感じてこなかった。使用人は主人の些細な表情の変化を読み取るが、主人は使用人の顔さえろくに覚えていない。
- 組織での応用: 部下は上司の曖昧な指示(「いい感じにしておいて」)の真意を必死に解釈し、空気を読み、先回りして動く。しかし、上司(権力者)は部下の個別の事情や感情を理解する必要がない。理解しなくても、命令(あるいは解釈労働の強制)によって人を動かせるからである。
3.2.3 「構造的愚かさ(Structural Stupidity)」
権力者(官僚、上司、システム設計者)が、他者を理解するための「解釈労働」を放棄できることによって生じる、組織的な想像力の欠如を、グレーバーは「構造的愚かさ」と呼ぶ。
- メカニズム: 官僚制は、複雑な現実を「書類上のカテゴリ」に無理やり当てはめることで処理を行う。個別の事情(「母が病気で書類が出せなかった」)は無視され、「提出期限」という単純なルールだけが適用される。これは個人の知能の問題ではなく、システムが「他者の立場を想像しない」ように設計されているために起こる現象である。
- 想像力の死角: この構造的愚かさは、組織内に「想像力の死角」を生み出す。権力を持つ側は、自分たちの決定が現場にどのような混乱をもたらすか想像できず(想像する必要がなく)、現場はその理不尽さに適応するために膨大な解釈労働を浪費させられる。
日本社会への応用:
「優秀なはずの上司が、なぜ現場の実情に合わない指示を出すのか?」「なぜ役所の手続きはこれほどまでに融通が利かないのか?」という疑問に対し、それは彼らの能力不足ではなく、権力が生み出す「構造的愚かさ」による。ご自身の「気疲れ」の正体が、強いられた「解釈労働」であると気づくことは大きな救いとなる。
3.3 思考ツール③:テクノロジーの停滞と「空飛ぶ車」
第2章「空飛ぶ自動車と利潤率の傾向的低下」では、テクノロジーの進化に対する我々の失望感を扱う。
3.3.1 「空飛ぶ車」はどこへ行った?
20世紀半ば、人々は2000年代には火星に植民地があり、空飛ぶ車で通勤し、ロボットが家事をし、週15時間労働になっていると信じていた。しかし、現実にはそれは起こらなかった。代わりに我々が手に入れたのは、インターネット、スマホ、そして終わりのないメール処理である。
3.3.2 詩的テクノロジー vs 官僚的テクノロジー
グレーバーはテクノロジーを2つに分類し、投資のシフトが起きたと分析する。
| テクノロジーの種類 | 特徴 | 具体例 | 1970年代以降の動向 |
| 詩的テクノロジー (Poetic Technologies) | 物理的現実を変革し、不可能を可能にする。夢想的。 | 宇宙旅行、空飛ぶ車、核融合、ロボット工学 | 投資が停滞・縮小。リスクが高いと敬遠される。 |
| 官僚的テクノロジー (Bureaucratic Technologies) | 管理、監視、事務処理を効率化する。社会的統制を強める。 | IT、インターネット、金融工学、人事評価システム | 投資が集中。管理社会の基盤となる。 |
3.3.3 なぜシフトしたのか?
グレーバーは、1960年代から70年代の社会的動乱(学生運動、労働運動)に対する支配層の恐怖が背景にあると推測する。「ロボットが労働を代替すれば、労働者階級は暇になり、革命を考えるようになるかもしれない」。そのため、体制側は「労働をなくす技術」ではなく、「労働を管理し、規律を強化する技術(IT)」への投資を選んだのだという。
結果として、テクノロジーは「現実を変える」方向ではなく、「シミュレーション(画面の中の世界)を精緻にする」方向へと進化した。我々は宇宙へ行く代わりに、高精細なスクリーンで宇宙の映画を見ている。
日本社会への応用:
「なぜこれほどテクノロジーが進化しても、仕事が楽にならないのか?」という問いへの答えとして、「我々が手にしたのは『仕事を管理するための技術』であって、『仕事をなくすための技術』ではなかったからだ。これは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に疲れた現代人の背景となる視点である。
3.4 思考ツール④:「ルールのユートピア」と遊びの恐怖
第3章では、それでもなお、なぜ我々が官僚制に依存してしまうのかという心理的側面に切り込む。
3.4.1 遊び(Play)とゲーム(Game)
グレーバーは「遊び」と「ゲーム」を区別する。
- 遊び(Play): 創造的で、予測不可能で、究極の自由がある状態。しかし、それは同時にカオスであり、何が起こるかわからない恐怖を伴う。
- ゲーム(Game): ルールによって境界が定められた遊び。ルールがあるからこそ、人は安心して没頭できる。誰が勝ちで誰が負けかが明確である。
3.4.2 官僚制の隠れた喜び
我々が官僚制を嫌いながらも手放せないのは、それが「世界をゲームのように公平で予測可能なものにしてくれる」という幻想(ユートピア)を提供しているからである。
官僚制のない世界は、恣意的な暴力や個人的なコネ、カリスマ的支配者が支配する世界かもしれない。それに対し、官僚制は「ルールさえ守れば、誰でも平等に扱われる」「手順さえ踏めば、確実に結果が得られる」という安心感を約束する(たとえそれが嘘であっても)。
我々は「予測不可能な自由(遊び)」よりも、「退屈だが安全なルール(官僚制)」を愛しているのではないか、とグレーバーは問いかける。
3.4.3 ファンタジーとD&Dのパラドックス
この心理を説明するために、グレーバーは『ロード・オブ・ザ・リング』などのファンタジー作品を分析する。ファンタジーの世界には官僚制がない。魔法使いや王は、書類を書かずに決断し、世界を変える。読者はその「官僚制からの解放」にカタルシスを感じる。
しかし、そのファンタジー世界を再現しようとするRPG(ダンジョンズ&ドラゴンズなど)は、驚くべきことに「ルールの塊」である。分厚いルールブック、能力値の数値化、サイコロによる判定。我々は「官僚制のない世界」を夢見ながら、それを遊ぶためには「極めて官僚的なルール」を必要とする。これは、人間の想像力がルールなしでは機能しづらくなっている「想像力の官僚化」を示唆している。
4. 官僚制の具体的エピソード
4.1 エピソードA:ドイツ郵便局の神話
- 内容: 19世紀のドイツ郵便局は、当時の世界で最も効率的で先進的な組織とみなされていた。
- グレーバーの指摘: 実は、レーニンがソビエト連邦を設計する際、理想としたのがこの「ドイツ郵便局」だった。「国家全体を一つの郵便局のように組織する」ことが社会主義の理想だったのだ。一方で、アメリカの現代企業もまた、効率的な物流と管理を目指して郵便局的なシステムを取り入れた。
- 意味: つまり、社会主義(官僚制)と資本主義(市場経済)は対立するものではなく、「全体を効率的に管理したい」という欲望において双子のような存在である。どちらも目指したのは「巨大な郵便局」だったのだ。
4.2 エピソードB:母の介護とメディケイド
- 内容: グレーバー自身が体験した、脳梗塞で倒れた母の介護にまつわるエピソード。彼は高名な人類学者であるにもかかわらず、メディケイド(医療扶助)の申請手続きにおいて、書類の不備を指摘され続け、何度も突き返された。
- 感情: 彼はその時、「自分はなんてバカなんだ」という強烈な無力感と自己嫌悪に襲われた。
- 解釈: これこそが「構造的愚かさ」の実体験である。システムが複雑怪奇であるために、利用者は知性を奪われ、幼児化させられる。この「自分がバカになったような感覚」は、多くの視聴者が役所や銀行の窓口で感じる感覚と共鳴するはずである。
4.3 エピソードC:バットマンの保守性
- 内容: 付録のエッセイで展開されるバットマン論。バットマンはスーパーヒーローだが、決して既存の社会構造を変えようとはしない。彼はゴッサムシティの腐敗した警察や司法制度を助け、逸脱者(ジョーカーなどの悪党)を刑務所に戻すだけである。
- 解釈: クリストファー・ノーラン版の映画において、バットマンは「想像力過多な犯罪者」を取り締まる「暴力的な官僚」として描かれる。彼はシステムの守護者であり、変革者ではない。これは、現代社会において「創造性」や「変革」がいかに危険視され、管理の対象とされているかの象徴である。
5. 現代的意義と再評価(2025年の視点)
本書は2015年に出版されたが、その洞察はAI時代においてこそ、より深刻なリアリティを持って迫ってくる。最新の研究や状況をまとめた。
5.1 AIと「解釈労働」の爆発
グレーバーの「解釈労働」の概念は、生成AI(ChatGPT等)の登場によって新たな局面を迎えている。
- 新たな解釈労働: AIは文脈を理解する「心」を持たない(構造的愚かさの極致)。そのため、人間はAIから望む回答を引き出すために、詳細なプロンプトを書き、出力された情報の真偽を確認し、修正するという、新たな「解釈労働」を強いられている。
- AI上司: アルゴリズムによる管理(Algorithmic Management)が進むギグ・エコノミーや物流倉庫では、労働者は人間の上司以上に融通の利かないAIの指示に従わなければならない。ここでは、AIという「対話不能な官僚」に対して、労働者が一方的に合わせるという究極の不均衡が生まれている。
5.2 「ブルシット・ジョブ」への接続
本書で論じられた「官僚制の肥大化」は、次作『ブルシット・ジョブ』で「無意味な仕事の増殖」として結実する。
- 管理のための仕事: 「リベラリズムの鉄則」により増え続けた規制や手続きは、それを処理するためだけの仕事(書類穴埋め人、脅し屋、尻ぬぐい)を大量に生み出した。
- スクリプトへの接続: 本書の内容を紹介することで、「なぜあなたの仕事はこんなにも書類が多いのか?」という疑問から、「もしかして、この仕事自体が無意味なのではないか?」という次なる問い(『ブルシット・ジョブ』への導入)へと本書の議論は展開する。
5.3 停滞するイノベーションと「失われた未来」
- イーロン・マスクと火星: 現在、一部の富豪が宇宙開発を進めているが、それはグレーバーが望んだ「万人のための詩的テクノロジー」ではなく、極めて排他的なプロジェクトに見える。
- 気候変動と官僚制: 気候変動対策さえも、炭素クレジット取引やESG投資といった複雑な金融商品・官僚的手続き(官僚的テクノロジー)に回収され、物理的な産業構造の転換(詩的テクノロジー)が進まない現状は、グレーバーの指摘そのものである。
6. 重要キーワード
キーワード集
- リベラリズムの鉄則 (The Iron Law of Liberalism): 自由化は規制を増やす。
- 構造的愚かさ (Structural Stupidity): 権力は想像力を欠如させる。
- 解釈労働 (Interpretive Labor): 弱者が強者を理解するために支払う見えないコスト。
- 詩的テクノロジー vs 官僚的テクノロジー: 夢見る技術 vs 管理する技術。
- 全面的官僚化 (Total Bureaucratization): 公と私の境界が消滅し、全てが管理対象となる状態。
- 想像力の死角 (Dead Zones of the Imagination): ルールによって思考停止させられた領域。
7. 結論:いとばや先生からの提言
デヴィッド・グレーバーの『官僚制のユートピア』は、現代のビジネスパーソンにとって「解毒剤」となる一冊である。それは、日々の業務における理不尽さを「自分の能力不足」として内面化してしまっている人々に対し、「それはシステムのバグではなく、官僚制の仕様(Feature)である」と告げるからだ。
グレーバーが提示するのは解決策(Solution)ではない。彼は、私たちが囚われている檻の構造を明らかにするための「図面」を渡しているのである。その図面(人類学的思考)を手にした時、みなさんの日常(官僚制)は、これまでとは全く違った風景に見え始めるはずである。

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